【賃貸ショップでは教えてくれない部屋探しの極意】①心理学的視点から見た押さえるべきポイント


 さて、新年も明けたところで、進学・就職・転職等に備えてこれから部屋探しをお考えの方も多いと思います。そこで、僕がこれまで数百回(もっと?)物件案内をしてきた経験と心理学なども合わせて、部屋探しの際に何を重視したら良いのかについて、従来とは異なる視点でも語ってみたいと思いますので何かの参考にして頂けたら幸いです。 



人間は得をしたい生き物

お部屋探しをする方は、もう100%といって良いくらい、皆さん予算基準より良いグレードの物件を求めます。つまり7万の家賃予算で、8万円ぐらいのグレード物件を求めてしまう。これは僕も一緒です。月1万円浮いたら、結構良い服が毎月買えますし(笑) 


これを特に否定するわけではありません。わがままでもなく当然のことと思います。ただこれを前提として頂き、まず部屋探しに100点は無いことを自覚することは重要です。


僕の感覚上、結果大体80点位で落ち着くことが多いですね。これはもう人間の欲求の仕組み上、仕方ない。それでも皆さん住んだ後に大体満足頂けています。もちろん、できるだけ100点に近づけるよう心がけています。 



マズローの欲求5段階説に見る、何を捨てて、何を残すのか?

残りの20点、何を捨てるのか?80点は何を残すのか?これを選択することで、結果的に満足できるようになります。そこで考えるべき最も重要な点は「何があると幸せに暮らせるのか?」です。


幸せとは、人間本来の欲求が満たされた状態。そこで注目したいのが、「マズローの欲求5段階説」です。 


これは、5つの欲求(1,生理的欲求 2,安全の欲求 3,社会的(所属や愛)欲求 4,承認の欲求 5,自己実現の欲求)を階層化し、人間の欲求は最も重要である1から順番に現れ、その欲求がある程度満たされると、次の欲求が現れるという心理学のひとつで、経営学にもよく取り入れられています。 


これらの5つの欲求を物件に当てはめると、こんな感じでしょうか。 


1,生理的欲求

→眠れる環境がある。綺麗な水が出る。過剰に暑く(寒く)ない。最低限の風通しや陽当たりがある。(インフラ衛生環境、騒音、気密性、エアコン、窓の向き.etc) 


2,安全の欲求

→犯罪に遭遇しずらい環境、設備がある。ある程度の風雨や地震でも崩れない。(二重ロック、エリア、オートロック、監視カメラ、RC.etc)


3,社会的(所属や愛)欲求

→移動時間を短くすることで家族や友人や恋人との時間が確保できる環境や、子供を産み育てられる環境がある。(エリア、公園.etc)


4,承認(尊厳)の欲求

→成長し周囲から認められる為に、仕事や勉強に没頭できる環境がある。(防音、会社学校からの距離、近隣施設)


5,自己実現の欲求

→趣味や仕事を開花できる環境がある。(プラスひと部屋。筋トレマシーンを置けたり、生花のアトリエがあったり.etc)


1は今の日本では殆どクリアできているように思います。5は、ちょっと経済的に余裕のある人向けといった感じで特に家に求めなくても十分良いレベルです。よって、物件選びに迷った際は、1から順に整理立てて再検討して見ると良いと思います。 


ちなみに2008年ハーバード大学の研究では、お互いに友人だと思っている関係の人が近所に住んでいると、幸福度が148%も上がるという結果も出ています。2つの物件で迷った時に、親友が近い方を選択すると良いかも知れません。もし現段階で居なければ、何かしらの近隣コミュニティに属して作ってしまいましょう。



では、捨てるべき点は?

沢山の方が割と重視しているのに、上記の欲求には明確に出てきていないものがあります。それは「見栄」です。見栄とは、見た目の姿を意識して、実際以上によく見せようとすること。では予算内に収めたい場合、これを思い切って排除することでグッと理想の物件に近づくことができます。


サンフランシスコ州立大学の研究によれば、人から好印象を得るため何かをしようとする人は、心が満たされず、他人との関わりも少ない傾向があるとのこと。幸せになれないんです。簡単に言うと1万円から5万円のコートに着替えたら幸福度も5倍になるか?ならないですよね。


物件における見栄の定義はコレ!というものがなく説明が少し難しいですが、例えば新築というひとつのイメージやブランドにこだわり過ぎるのも人によっては見栄になるのかも知れません。新築はそれまで誰も住んでいないという点で安心感はありますが、往々にして賃料は割高です。スタイリッシュなデザイナーズとかもそう。


とどのつまり、友人や周囲の人に「あんな立派な家に住んでて凄いな」と思われて満足感に浸れても、それは一過性のものでサステナブルな幸福度には直結しないので、それが予算上足かせになるのならバッサリ切ってしまいましょう。そもそもそんなに沢山の人をしょっちゅう家に呼ぶ?という疑問もありますし(笑)。念の為言っておくと、新築やデザイナーズを否定しているわけではありません。予算内に収まるならアリだと思います。



見栄を張ってもOKなポイントも

とは言え、住むエリアについては多少見栄を張っても良いと思います。何故なら、人気・高級と言われるエリアは、そう言われる所以があるからです。人気エリアは概ね生活の利便性が高く、商業施設が付近にあったり、ビジネスエリアやターミナル駅からも路線一本で行けたりなどしますので移動時間を減らせるメリットがあります。


高級エリアは犯罪率が低かったり、居住者のマナーも良かったりするので相対的に見て安心安全に暮らすことができます。 上記のマズローの説でも、安全は2番目、所属や愛は3番目のベースになっておりとても大事なところ。そこは拘っていいのではないでしょうか。



「住めば都」を信じよう

逆に「俺、男だし安全性とかは特に気にしないな〜」という方は、予算内に収めやすいのでラッキーですね。僕は以前駅徒歩25分の所に住んでいたことがありますが、自転車移動がメインだったり雨の日もバス停が近かったので殆ど不便さを感じませんでした。


また古さや多少の狭さも意外と慣れます。というか住み始めると全然気にならなくなります。 実はこれも心理学でいう「ザイオンス効果」の一つです。繰り返し触れると認識し、愛着が湧いてしまうという効果で、広告でよく使われる手法。


家についても、住むまでは気になった欠点が次第に慣れ、どうでもよくなったり愛着が湧いたりしてしまうものです。デメリットで深く悩んでも「住めば都だ。えいやっ!」って決めてしまうのも手ですね。


ちなみに古さで注意すべき点としては音です。造りが古く耐久性が低下していると、上下隣の音が響くことがありストレスになります。人間が出す音というのは住むストレスの中でも結構上位に来ますので要注意。



では、それを避けるためにはどうしたら良いか?細かい盲点のテクニックがいくつかありますので、それについては次回にでもまた語ることにします。