民法改正による不動産売買契約。最低限押さえておきたい4つのポイント


2020年4月1日より民法が改正されましたね。我々不動産業者にとっては、賃貸と売買の両方で大きく影響を受けることになり、今一度ふんどしを締めないといけないタイミングです。


そこで、宅建講習会の参加はもちろん、個人でも色々と調べてみたのですが、民法改正について説明したWEBページは沢山あるものの、項目が多く説明も長くて、読んでいてかなり混乱してきます。沢山知ろうとして結局なんとなくわかっただけでは意味がないので、最低限何を知っておくべきなのか、これを簡潔に整理すべきだと思いました。

LIFULL HOME'Sのサイトより転載。これだけでは正直なんのこっちゃわかりません。
(もちろんサイト内ではしっかり解説されています)


例えば、宅建試験の勉強で都市計画法の12の用途地域とその定義を覚えさせられますが、実務で完全に暗記している必要はなく、「市街化区域には用途地域が複数に分かれている」ことだけ覚えておいて、お客さんに提案するときは資料を事前に確認しようと気をつけていればOKですよね。それと同じ感覚で、完結に絞るとこの4点かなと思いました。



民法改正で最低限の最低限、覚えておくべき4点


①「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わった!

②買主が対抗措置が2つから4つになった!

③買主の権利行使は契約不適合を知った時から1年以内に通知すればOK!

④売主が一般人の場合、契約不適合責任は買主が同意すればカットできる!



解説します


①「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わった!

何が違うんだ?と思いますね。ざっくりいうと、買主保護の観点から、買主が売主に要求できる範囲がより大きく、そして細かくなったということです。

従来の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」が対象でしたが、改正により「 契約の内容に適合しないもの」全般が対象となります。



②買主が対抗措置が2つから4つになった!

これまで買主ができる対抗措置は「①契約解除」「②損害賠償」のみでしたが、改正後はこれに「③完全履行請求(追完請求)」「③代金減額請求」が加わります。

つまり建物の内の設備が壊れていたら、欠陥・不備を直せ!できないなら値下げしろ!等、対抗できることになりますね。オール・オア・ナッシングの中間ができたイメージでしょうか。


ちなみに損害賠償ではこれまで請求が認められなかった履行利益も請求できるみたいです。不動産における履行利益とは主に、転売して得る予定だった利益とか、賃貸収入でしょう。



③買主の行使は契約不適合を知った時から1年以内に通知すればOK!

1年以内に「通知」というのがポイント。今までは"知った時から1年以内に損害賠償請求および契約解除要求の権利行使"という内容でしたが、通知すれば足りるということです。


尚、通知の内容については、瑕疵・数量不足の種類をその大体の範囲を明らかにするだけでよく、損害賠償の額の根拠まで示す必要はないそうです。


但し、この項目については下記のような例外もあるので注意したいところ。

・売主が契約不適合につき悪意または重過失であった場合は期限なし

・5年もしくは10年の消滅時効あり

・数量や移転した権利に関する契約不適合を理由とする権利行使については期限なし



④売主が一般人の場合、契約不適合責任は買主が同意すればカットできる!

契約不適合責任は瑕疵担保責任同様、任意規定であることは変わらないので、買主が同意すれば免責できます。改正で厳しくなったイメージだったので個人的にこれは意外でした。


但し、宅建業者並びに事業者が売主となる場合(で、買主が一般人)は、これも瑕疵担保同様、全部または一部免責しても無効になりますのでご注意を。(民法でなく宅建業法・消費者契約法が適用される)



その他

契約不適合の要件の有無についての判断時期は、従来は契約締結時までであったが、契約履行時(例:建物引渡等)までに生じた分から行使できるようになりました。



改正後、不動産業者が特に気をつけるべき点とは?


ということで、これらを踏まえて我々宅建業者が気をつけることは、売主に設備表と物件状況告知書を今まで以上にしっかりと書いてもらうことが重要であることは間違いなさそうです。

そして、やはりインスペクション+瑕疵保険を付けておくのがベターですね。



尚、上記内容は解りやすく極力完結に、を心がけており、表現方法に誤りがある可能性があります。不足している内容もあります。法律というのは非常に厄介で、ケースによって例外や補足事項があったり複雑で、内容を短文で表すのは不可能です。下記サイトを参考にしていますが、誤りがある場合はこっそりご指摘いただけると幸いです。


<参考サイト>

LIFULL HOME'S 債権法改正によって「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ

企業法務の法律相談サービス 契約不適合責任とは?責任内容と契約書での注意点を解説

・BUSINESS LAWYERS 民法改正(債権法改正)と不動産取引への影響 第1回 売買契約に関連する民法改正のポイント